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「わたしと介護」  第3回 吉本裕二さん




藤田 今日はお忙しい中、時間をとってくださってありがとうございます。

「わたしと介護」記念すべき第3回目のゲストは、特別養護老人ホーム・サンシャイン南蟹屋の吉本裕二さん(仮名※)です。ようこそ、いらっしゃいませ。どうぞ、こちらへ。

(※)ご本人の希望で仮名としました。

吉本さん(以下敬称略) 吉本です。よろしくお願いします。

藤田 お忙しいところ、お疲れのところ来て下さって本当にありがとうございます。今日もガンガンと吉本さんの魅力を爆発させていただきたいと思います(笑)。

このインタビューでは毎回お話をしてくださる方に、あらかじめ質問リストを紙でお渡ししているのですが、吉本さんはそれをパソコンに打ち込んでその上で回答をプリントアウトしてきてくだすってます。わざわざありがとうございます。これは見やすいです。吉本さん、パソコンはお得意なんですか?

吉本 ワードやエクセルを軽く扱うことが出来るくらいですが、多少はできます。

藤田 いやいや、そういう方がなかなかいないんです(笑)。素晴らしいです。

では早速質問させてください。サンシャインに来られる前は、病院で相談員の仕事をされていた、とのことですね?

吉本 はい。高校を卒業するときに、相談員の仕事を勉強してみたいと思いまして。支援を必要としている人から話をお聞きして、利用できる支援が届くような、地域全体でうまく支援をつなげるような、そんな仕事がしたいって思い、大学は社会福祉士のコースがあるところに入りました。

大学入学後もそんな仕事をしたいなってぼんやりと思っていたのですが、4年生になって、具体的にはどうしよう?ということになり、進路に迷いまして。いろんな先生に相談に乗って頂き、ゼミ活動でお世話になった先生のご紹介で、病院のメディカルソーシャルワーカーとして働かせていただくことになりました。

藤田 はああ。そうですか。そうするともう高校を卒業される時から、そういう関係の仕事をしたいと思われてたんですね。それにはなにかわけがあったんですか?

吉本 はい。お金とか会社のために働くのがわたしには向いてないと思ったんです。誰か人のお役に立てるような仕事の方がやりがいがあるな、その方が続くだろうなって思って、福祉業界で働きたいなって思ったんです。

藤田 ははあ。なるほど。そうですか。それじゃあれですね、社会福祉とか公共のためっていうか、そっちの方に意識があったんですね。

吉本 そうですね。どうしても、お金のために働くっていうとモチベーションの方がドンドン下がっていくかなあって。

藤田 え?ひょっとして家がものすごいお金持ちなんですか?

吉本 いえ。全然そういうことはないんですが。

藤田 そう言えば、最近の若い人たちは昔と違って、お金のために働く人は少ないよって、ウェブかなんかでホリエモンさんだったかな?言われてるのを聞いたことがあるような(笑)。

吉本 確かに、そうかも知れませんね。

藤田 それで大学に行かれて、社会福祉士の資格を取られた?

吉本 はい。そうです。

藤田 社会福祉士の資格を取る試験って難しいって、よく聞きますけど、一度で取られたんですか?

吉本 はい。運もありましたが、沢山勉強したので。

藤田 なるほど。それから病院でソーシャルワーカーになられたわけですが、それはどんなお仕事なんですか?

吉本 大まかに言うと。患者さんが入院するときの手続き、入院中の生活相談、退院後の生活支援の話をするっていう感じですね。

藤田 じゃあそういう相談員の仕事をされて、そのとき、あー、これがぼくの求めていた仕事だー!っていうような、手応えっていうか、そういうものを感じられながら仕事をされていたんですね?

吉本 勿論やりがいを感じておりましたが、わたしの勉強不足があり、業務についていくのが難しいなあと感じるようになってしまいまして。

藤田 回答された中にはそのへんのことでしょうか、「業務に壁を感じた」とありますが、そこを少し教えて下さいますか?

吉本 はい。まず第一に、患者さんとうまくコミュニケーションが取れなかったんです。

藤田 コミュニケーションが?

吉本 はい。例えば、患者さんと、敬語で話したらいいのかいわゆるタメ語で話したらいいのか、そのあたりの判断が当時は全然できなくて。距離感というかですね。だから全然コミュニケーションが取れませんでした。

藤田 でも業務をやられる中で、少しずつでもコミュニケーションがとれるようにはならなかったんですか?

吉本 出来るようになりませんでした。患者さんとの関わりだけじゃなくて、他の人との関わりでもつまずくようになっていって。ドンドンドンドン、全体が悪くなっていって。

藤田 それはどうしてなんでしょう?

吉本 怖かったのだと思います。家族さんとも結構密接に話をするのですが、もし失礼なことを言ってしまったらどうしよう、失礼なことを言って嫌われてしまったら、病院にとっては結構損失になるんじゃないだろうかとか考えちゃうんです。それで怖かったのです。緊張で、どうしたらいいかわからなくなって。もちろん先輩方がいて、いろいろ教えてくださったのですが、ついていけなかったのです。

藤田 患者さんだけじゃなくて、その家族さんや、もちろん医師の方や看護師の方なんかもいらっしゃったでしょうけど、そういう方たちともうまくコミュニケーションが取れなかった?

吉本 はい、相談員としては致命的でした。

藤田 なるほどー。

吉本 しかしながら、サンシャインで働かせていただいて、コミュニケーションの取り方がわかるようになりました。

藤田 え?そうなんですか?どうしてですか?

吉本 はい、先輩方が利用者様と、近い距離感で話しかけておられて、少しずつ距離感が掴めてきて、ずいぶん気が楽になって。もちろん敬語でお話をするのですが、その時のきもちが、こう、もっと楽なものでよかったんだー、ってわかったんですね。


(※)敬語で節度ある接遇が施設の考えです。


藤田 なるほどー。そういうこともあるんですね。

それからサンシャインに来られた経緯は?という質問の回答なんですが、「相談員を再度目指すなら、必ず現場を経験しないといけないと思って」とあります。これはどういうことですか?

吉本 病院での経験から、現場の人たちの大変さが全然わかってないのに、相談員やれないな、と思ったんです。それでサンシャインで現場の経験を積みたいなと。

藤田 もう一度相談員、やってみるんですね?

吉本 そうです。

藤田 それでサンシャインに来られたわけですが、もう1年になりますか。

吉本 今日でちょうど1年と2ヶ月になります。

藤田 あ、そうですか。で、経験を積まれてどうですか?現場の仕事は?

吉本 それでも相談員の仕事に比べると、今の自分にとってはやりやすく感じました。

藤田 えーそうなんですか?

吉本 そうです。病院で相談員をやってた頃と今を比べたら、やりやすいです。

藤田 はあー。

吉本 相談員だった頃は、現場では肉体はしんどいですけども、利用者様と仲が良くて、結構楽しいです。

藤田 なるほどー。

吉本 相談員って言ってもいろいろ種類があって、わたしがやっていた病院のメディカルソーシャルワーカーっていうのは相談員の中でも難しい職種だと思います。まず医療知識があった方が良くて。だからそこに何も知らずに飛び込んだのは、ちょっと浅はかでした。

藤田 へええ。そうなんですか。面白いですねえ。だったら病院じゃなくて、こういう施設の相談員でもいいし、包括支援センターなんかの相談員もできますね。社会福祉士の資格をもってらっしゃるのでなんでもできそうです。

吉本 そうですね。そういうのもありですね。

藤田 次は、どんな後輩に入社して欲しいですか?という質問なんですが、これに吉本さん「あいさつのお返事を下さる方であればとても嬉しいです」とありますね(笑)。これは具体的でいいですね。

吉本 ええ、おっしゃるとおりです。

藤田 そう言えば、サンシャインのホームページのもうひとつの連載で「介護保険物語」っていうのを森藤部長とやらせていただいているんですけど、その中で、森藤部長に、いい介護をするためには、結局どういうことからやっていけばいいでしょうか?ってお尋ねしたことがあるんですよ。すると森藤部長も「まずはあいさつからでしょう」っておっしゃられてるんです。

吉本 そうなんですか。でもそういう人が入ってくれたらいいなって、心から思っています。

藤田 そう言えば吉本さんの後輩っていらっしゃるんですか?

吉本 ええ、おられますよ。前回インタビューされた木谷さんも一応、後輩ということになります。

藤田 あー、そうかー!木谷さん、後輩になるんだ?でも先輩風吹かしてる(笑)?

吉本 いえいえ。とても優秀な人ですから。

藤田 えー(笑)。次の質問ですが、仕事で大切にしていることはなんですか?という質問に「職員同士の協力が大切」ってありますが、これについてもう少し教えてもらえますか?

吉本 ええ。まず第一に、お互いがふつうに話ができるっていうことですね。まずそこからだと思います仕事のここが出来てないとしても、それを全部自分でカバーしようとするんじゃなくて、ここのところちょっとできてないんだけど、やってくれませんか?って、ちゃんと頼めるような関係になるっていうか。

藤田 はあ。なるほど。

わたしも家の町内会の仕事であれこれやることがあるんだけど、そういうときって、町内の人結構来てるんだけど、みんなボーッと立ってるんですよ(笑)。なにをやればいいかわからないから。そういうときあれですよね、ぼくこれやるからきみこれやってよ、って話ができると、仕事が早く済むし、第一楽しいよねー(笑)。

吉本 そうですね、おっしゃるとおりです。

藤田 ほんとだよね。でもその辺は難しいですよね。アニメの攻殻機動隊じゃないけど(笑)、スタンド・アローンだけどみんなのチームワークができてるっていうの?あれって理想だなって思いますね。

次の質問ですが、どんなキャリアステップを描いていますか?っていうのに、「まずは介護福祉士の受験資格を満たし介護福祉士の資格を取る」ってありますね?これは本当ですか?

吉本 ええ。

藤田 まあ、嘘は書かないだろうけど(笑)。でもこれはどうしてなんです?

吉本 漠然とですが、介護士として一人前って認められるのがまずは介護福祉士と考えてまして。

藤田 なるほど。では次の質問です。入社して身についたと思うスキルはなんですか?というものに「優先順位を決めてから行動を起こす癖がつきました」ということですが。これも面白い答えですねえ。どういうことですか?

吉本 とある書籍に、「マルチタスクを避けて行動すると良い」と書いてありまして、忙しさを少しでも減らすために、仕事で実践しています。

藤田 あーそうかー。でもそんなに忙しい?

吉本 忙しいです。でも同僚の方々にフォローをしていただいて、おかげ様で大分なれました。

藤田 なるほどー。なにかやりに来たその道すがら利用者様から別のこと頼まれたりして(笑)、そういうことが2つ3つ重なると、もうそもそもなにやりに来たか覚えてない(笑)。

吉本 自分にも身に覚えがあります。でも抜けちゃいけない大切なことを先にやるように心がけています。

藤田 そっかー(笑)。わたしは大切なことも忘れちゃう(笑)。やることが最新順になっちゃってるから(笑)。

それから次の質問です。今後挑戦したい仕事はなんですか?というのに「今は目の前の仕事で精一杯なので、自分の未熟な部分を成長させていきたい」ということですね。この自分の未熟な部分っていうのはどういうところなんですか?

吉本 そうですね。やっぱりみんなで協力していきたいって部分でしょうか。どうしても自分で抱え込んじゃうことが多くて。例えば苦手なスタッフがいたとして、いたとしてですが。苦手だからといってその人を避けるのではなくて、仕事だから、話しかけて、~はどうしたらいいですか?など、ちゃんと訊けるようにする。そういう部分、ほんとうに未熟だと痛感しています。

藤田 はあー。なるほどねえ。でもそのへんは、ホント、難しいですよねー。

でもねえ、吉本さんがやろうとしてること?苦手な人にも話しかけて、仕事をしやすくするっていう、それって、ホント難しいことだなあーって思います。それをやろうとしてる吉本さん、ホント偉い人だなーって思います。

吉本 いえ、できていないので、恐縮です。

藤田 いやー。ホントね。それができるようになったら、ある意味達人ですよ(笑)。

吉本 ええ。しかしながらそれは、強く相談員に求められている能力だと考えています。病院だと怖い家族さんともうまくやっていく。相談員はそこに大きく関わりますから。

藤田 はあー、なるほどねえ。

吉本 でも、人とお話をすることは嫌いではありません。

藤田 はああ。なんかあれですね、相談員の仕事をものすごくシビアに捉えられてる感じですねえ。もう少し気楽な感じがあってもいいのかなあって思いますけど。お話を聞いてると、ホント、吉本さんのまじめさ、優秀さが伝わってきます。

吉本 理想が高いだけでして・・・。実際にできるようになったら、もう一度社会福祉士としての仕事をしてみたいなと考えています。

藤田 わかりました。では最後の質問です。あなたにとって介護とは?というものですが、その答えが「自分を身体的にも、精神的にも、成長させてくれる仕事と考えています。」ということですが、これホント(笑)?

吉本 ええ、もちろん本当のことです。でもちょっとその答えは漠然としていて。人と関わりたいけど関わる力が足りないわたしにとっては、介護の仕事は成長の場でした。もちろん楽しさもありますが、自分としては、色んなことを試して、自分が成長できる場になっています。ここまで人と接する仕事って他にないと思います。サラリーマンの営業とかとも違って、もっと近いものが求められる。今わたしに一番足りないものが学べ、修行できるのは介護が一番良いと考えています。

藤田 なんかあれですね、修行とか、うーん、自分をきつく律するっていうか、そういうタイプなのかなあ。吉本さんは。

吉本 いやあー、そういうタイプっていうか、…タイプでしょうか。でもそれが生きる実感になるというか。今際の時に後悔しない生き方をしたいですね。

藤田 うーん。聞いてると、あれですね。こう、吉本さんのまわりに世界があって、その世界と吉本さんが絶えず緊張感をもって対峙してるっていうか、そうして生活してる感じを受けますね。

吉本 私だけでなく、老若男女問わず、なにか緊張感を持ってると思いますよ(笑)

藤田 ははは(笑)。いやあ、本当に面白いお話でした。こんなまとめ方でいいんでしょうか(笑)?

長い時間、お話を聞かせていただきました。吉本さん、ありがとうございました!

吉本 いえ、こちらこそ、ありがとうございました。お役に立てたのであれば幸いです。

藤田 もう十分立つと思います(笑)。これで嫌になられず、わたしを見かけたらぜひ声を掛けてくださいね!ありがとうございました。

吉本 いえ、もちろんです。ありがとうございました。

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