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介護保険物語 第2回 (1/3)

藤田 さて今日はご好評いただいております連載企画「介護保険物語」の第2回です。今日もわたしたちの山であり海である森藤部長にお話をうかがいたいと思います。よろしくお願いします。

森藤部長(以下敬称略) 今日も、海のものとも山のものともつかない取り留めのない、独断と偏見に満ちた思いつき話しになる予感がしますが、よろしくお願いします。

藤田 今日は「介護とは?」というテーマでお話を伺いたいと思います。前回の終わりで次回は「介護とは?」というテーマでいこうと決まってから、実はわたし、ずっとワクワクしておりまして(笑)。「介護」大好きなもので(笑)。今日はどんなお話が伺えるかなあって、とても楽しみにしております。と言いましても、このままじゃ漠然としすぎてて(笑)、どこからお話を伺えばいいかわからないのですが、どうしましょう?

介護が必要な人を3つに分けてみた

森藤 そうですねえ。「介護」についてお話する前に、まずしっかり押さえておきたいことがあるのですが。

藤田 はい。

森藤 「介護」を考えるとき、とかく「介護」を行う側から考えがちになるのですが、本当は「介護」を受ける側の人の状態をしっかり考えなきゃいけないと思うんですね。そこで、ちょっと乱暴だけど、介護を受ける人を便宜上、次の3つのグループに分けてみたんですよ。

①身体機能だけに問題がある人。

②身体機能にはさほど問題はないが、いわゆる認知症の人。

③体力面・精神面が著しく衰えている人。(たぶんこのグループが一番多い)

で、この3つのカテゴリー (実際にはこれに医療的要素が絡んで、複雑になってるんだけど) に分けて言うと、いわゆる「介護」を考えるときに、その対象者として一番分かり易い、イメージし易いのが、①と②の人なんですよ。そう、「介護」というのは身体が不自由な人の手助けをするんだとね。また、認知症については最近いろいろ話題にもなっているし何となくイメージも沸くでしょう。

藤田 あああ、イメージしやすいんですね?

森藤 そうです。例えばテレビドラマで介護施設が出てくるとしますね。でもその番組に出てる入所者さんたちは、本当にこういう施設に入っている人とだいぶ雰囲気が違うでしょ?

藤田 そりゃそうですよね。ずいぶん元気だ(笑)。

森藤 そう(笑)。表情がやっぱり違いますよね。今にも死にそうな人を出すわけにはいかない。これはやっぱり介護と言えば身体が不自由な人の世話をする、というイメージですね。

だけど視聴者はそういうドラマを観て、介護ってそういうもんだ、みたいなイメージをもつわけでしょ?そしてそういうイメージを前提にして、介護職に就く人もいるかもしれません。

でもそうして特養とかの施設に入って働くとき、①や②の人よりも、③の人が一番多いわけでしょ?③の人に直面したら、それに合わせて「介護」しなきゃいけない。そうすると相手の方がどういう状態の方でどういう「介護」を必要としているのかを十分理解していないと正しい「介護」はできない。これはなかなか難しいことなんですよね。

藤田 ははあ。そうでしょうねえ。

森藤 つまり、①や②の人や要支援とか要介護1とか2とかという人に対する「介護」はね、たぶん素人でも何とかそれなりにやっていけるんではないでしょうかね。

藤田 ほうほう。

森藤 だからそこに「困難さ」っていうのはないと思うんです。言ってみればこの状態の人は、ここの部分だけ助けてくれれば、あとは自分で楽しんでできるよ、という面があるので、ある意味ビジネスライクに「介護」できるんじゃないか、と。それはそれで「介護」のひとつの段階ではあるわけです。ですが、いつまでもそういう状態のままではいられない。

そうではなくなったとき、介護する職員としては、「介護」のレベルを上げていかなきゃいけない。

藤田 はああ。要介護3以上の人や、ここで言う③の人なんかでは介護のレベルを上げていかなきゃいけない、と。必要となる介護のレベルが違うんですね。でも施設に入ってくる職員さんたち、最初は①や②の人を想定して介護を考えているわけですね。それじゃあおっつかない。じゃあ森藤部長としては、介護でレベルを上げるっていうのは、どうすれば上がるとお考えなんでしょう?そもそもレベルの上がった介護ってどんなんですか?

作業としての「介護」ではなく

森藤 わたしの基本的な考えを言うとね、③の人たちはね、障害のあるところを補ってもらう、ということだけではなくて、人生の終盤に差し掛かっているわけですよ。そうして身体機能、精神機能が失われて、やがて亡くなっていくという方向に向かっているので、そういう状態で、自立したり、自分でなにかをする、ということが本当に必要なのか?求められているのか?ということなんですよ。

藤田 なるほど。なるほど。(大いに頭を上下に振っている)

森藤 そうやって、能力が徐々に失われている人に、どう「寄り添う」か?というところを見つめていかないと、なんのために「介護」をしてるんだろうか?ということになるわけです。「介護」を単に作業と受け取ると、こういう場合はこう、とかいろいろやり方はあるけれども、お年寄りが求めているのはね、そういう作業としての「介護」じゃないだろう、と思うわけです。

藤田 それはわたしもそう思います。でも作業ではない「介護」というと、どういう介護なんですか?

森藤 施設や病院で最後を迎えようとしているお年寄りの多くは実は「人生の終わりを自宅で迎えたい」と思っている、とよく言われますよね?じゃあ、どうして自宅で亡くなりたいんだろう?自宅の何がいいのだろう?と考えるとしましょう。施設にはないけど自宅にはあるもの、病院にはないけど自宅にはあるものってなんだろう?

それはね、まずひとつには、長年慣れ親しんで暮らしていたところなのだから、自宅には色んな思い出があるわけです。住んでた記憶がある。もうひとつは、それに加えて、自分を暖かく見守ってくれて世話をしてくれる家族がいるわけですよね。家族に世話をしてもらえるっていう安心感というか。少なくとも本人はそう期待している。その2つが、たぶん、自宅で最後を迎えたいと思う人が望むもの、求めるものではないでしょうか。

藤田 ふんふん、なるほど、そうですね。

森藤 で、その一番目(自宅にまつわる思い出)っていうのは、まあ病院とか施設では作りにくいわけだけど、二番目の、自分を暖かく見守ってくれて世話をしてくれる、安心だ、という思い、それは施設や病院でももってもらうことができるんじゃなかろうか、と。

こういう話になると、人間の内面の世界に目を向けていくことになるんですが、そういう観点を施設の職員がどの程度理解し認識してサービスにあたっているのか、ということが問われてくるんではなかろうかと思います。

つまり、お年寄りが自身でできないところを補うという外的な介護に留まるのではなく、もう少し内面に目を向けたとき「寄り添う」というところをどのくらい認識しているかというところにまで踏み込んでいくことになるということです。

藤田 なるほどー。そう考えるとわかりやすいですね。

森藤 誰しもいつかはどこかで、そういう状態(③の状態)になり得るわけで、もしそうなったとき、そこのところでどう対応するかということを介護職員はしっかりもってないと「人生の終わりを自宅で迎えたい」というお年寄りの願いに応えることはできないということです。

そういう状態になると、もう、今度は「死」に向かっているわけで、そうなると「どう過ごしてもらうか」、亡くなるまでにいったいなにをして差し上げることができるんだろうか?ということを考えなきゃいけないわけです。

そういうことを思いつつでも形としての介護、作業としての介護も必要なわけですよ。

藤田 はあはあ。食事介助とか排泄介助とかですね。

森藤 そう。そういうことは決まってくる。じゃあそれだけやっていればいいのか?って言うとそうではなくて、その人に本当にやってあげなきゃいけないことがあるんだよ、ということです。施設が自宅であるかのように、家族のように「寄り添う」介護、これも「介護」だし、お年寄りは実はそういう「介護」こそを求めているんじゃないか、ということですよ。

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