親の介護がしたい
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認知症を知ろう
認知症ってどんな病気?
認知症とは「脳疾患によって起こる、記憶や思考などの高次脳機能の障害からなる症候群」と言われています。
認知症を引き起こす脳疾患はいろいろありますが、中でもアルツハイマー病と血管性認知症の両者による認知症が全体の75〜80%を占めています。
認知症になられる方の割合は、65〜69歳では1.5%ですが、85歳以上では27.3%の方が認知症になられているという統計データ(1992年)があります。
認知症の診断は、問診形式のスケールと呼ばれる質問票(長谷川式やMMSE)への回答と合わせて、CTやMRI等を使った脳画像検査によってなされます。
病院に行かれて初めて診察してもらうときには次のような質問をされます。メモを作成しておいて医師に渡すといいでしょう。
気になる症状はどのようなもので、いつから出はじめたのか
症状が出はじめたころに気になるようなきっかけ、病気や事故などはあったか
発見してからこれまで進行・悪化した様子はあるか
これまでにかかったことがある病気、現在、治療中の病気の情報
服薬中のお薬、何をいつから服薬しているか
その他、家族として心配なこと、気がかりなことはあるか
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認知症はこんな病気
認知症の症状は、中核症状と周辺症状の二つに大別されます。
中核症状は必ず出る症状で、診断や進行を判断する目安とされます。中核症状の中でも中心となる症状は、記憶障害と見当識・判断力の障害です。ヒントがあっても思い出せなくなったり、日時や場所や人がわからなくなります。
周辺症状は中核障害に伴って二次的に生じる症状で、ないものが見えたり聞こえたり、食事を食べすぎたり食べなかったり、食べ物ではないものを口にしたり、事実ではないことを思い込んだり、といったことが起こります。
また、認知症になった本人には自覚症状がないというのは間違いで、症状に最初に気づくのは本人です。周りの世界に対する自分の感覚が以前と違ったものになっていることに気づくことは、おそらくとても不安な体験だと思います。
もし家族が認知症になったなら、そのことを想像して、自然に接して温かいサポートをしてあげてください。自分の価値観で接するのではなく、相手をそのまま受け入れてあげましょう。
どう向き合えばいいの?
認知症になった方を介護する家族などの介護者にとって、問題となるのは、認知症の中核症状に由来する生活上の不具合よりも、むしろその周辺症状としての問題行動ではないでしょうか。
認知症になっても、周りの環境や対応の仕方次第では、中核症状は出ないし、出ても軽い症状ですんだりします。
ですので、この周辺症状(BPSDとも呼ばれます)がなるべく出ない・出ても軽減できるよう支援するのがいい介護だと言えます。そのためには「パーソンセンタードケア(PCC)」の実践が重要です。
パーソンセンタードケアは、認知症をもつ人を一人の“人”として尊重し、その人の視点や立場に立って理解し、ケアを行おうとする認知症ケアの考え方です。パーソンセンタードケアでは、安らぎ、愛情、タッチ、承認、笑顔などが重要な要素になります。
BPSDを抑えるために薬物療法が取られることがありますが、BPSDの悪化要因の約38%がこの薬物によるものだというデータもあります。つまりBPSDを抑えるための薬剤が、62%の人にしか効かず、残りの人は更に悪化するのです。
ですので、BPSD治療には、個別対応や回想法、音楽療法、化粧療法などの、非薬物療法を第一に考えます。これら非薬物療法の原則は、楽しくて精神的に安定することにあります。その結果BPSDは軽減し、介護するのに良好な状態がつくられます。